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監督署の臨検、是正勧告への対応

Q.

正社員5名、パートタイマー7名の従業員で食品製造業を営んでいます。先日、突然、労働基準監督官が会社を訪れ、賃金台帳や関係書類の提示を求められました。当日受けとった是正勧告書には、「残業協定なしで残業を行っていること、割増賃金の単価に皆勤手当が算入されていないこと、就業規則の届出がないこと」が指摘されています。どう対応したらよいですか。

A.

労働基準監督官は、予告なしに事業場に赴き、労働基準法や労働安全衛生法等の法律違反の有無を調査することができます。これを臨検といいます。監督官が交付する是正報告書の書式にもとづき、期日までに法違反の是正が確認できる書類等を添付して報告しなければなりません。これを怠ったり、虚偽報告をすると、司法処分を受けることがあります。


◆労働基準監督官の職務権限

  労働基準監督官は、行政職員として事業場に対する臨検調査を行う権限と、司法警察官としての職務権限も与えられています。すなわち、労働基準監督官は、「事業場、寄宿舎その他の附属建設物に臨検し、帳簿及び書類の提出を求め、又は使用者若しくは労働者に対して尋問を行うことができる」(労基法101条1項)ほか、「この法律違反の罪について、刑事訴訟法に規定する司法警察官の職務を行う」こともできるのです(同法102条)。最低労働基準の実効性を確保するために、強力な法的手段が講じられています。
  臨検は、労働基準監督行政の柱であり、定期監督、災害調査、災害時監督、申告監督、再監督の5種類があります。
  定期監督とは、監督署が定めた年度計画と行政課題にもとづいて事業所を選定し、定期的に行われるもの。臨検のメインです。
  災害調査は、重大災害が発生したときに即時行われるものであり、災害時監督は、事業主から提出された労働者死傷病報告にもとづき、随時、一定の選定基準にもとづき行われるものです。いずれも、労働災害発生の原因究明と同種の労働災害の再発防止が目的。
  申告監督は、労基法104条1項および安衛法97条1項による、労働者の申告を契機とする査察です。労働者の申告によって行政警察権の発動を促しています。同時に、申告したことを理由とする解雇その他の不利益取扱いを禁止しています。
  再監督は、重大な法違反の事案について、改善状況を再度臨検して確認を行うものです。


◆是正勧告書と是正報告書

  労働基準監督官が事業者に交付する文書には、是正勧告書のほか、指導票と使用停止等命令書のあわせて3つがあります。
  是正勧告書は、臨検の際、事業所の資料に基づき、労基法や安衛法等の違反がある場合に、即時あるいは一定期間内に改善することを求めて交付される文書。違反の根拠条文、違反事項、是正期日が記されています。しかも、「所定期日までに是正しない場合又は当該期日前であっても当該法違反を原因として労働災害が発生した場合には、事案の内容に応じ、送検手続をとることがあります」という警告文もついています。
  本件の場合、指摘された労基法違反の改善事項は3つ。1つは、労基法36条にもとづく残業協定を労働者代表と締結し、労基署に届け出ること(32条1項、2項)。
  2つめは、適正な割増賃金の支払い(37条)。割増賃金の基礎となる賃金から除外してよいのは法令で限定列挙されたものだけ。皆勤手当は含めなければなりません。
  3つめは、就業規則の作成および届出。パートを含め、「常時10人以上の労働者を使用する使用者」は、作成届出義務があります(89条)。
  是正報告書には、支払いの証拠となる領収書や振込通知書の写し等を添付して、是正が確認できるようにして提出します。

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