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労働実務Q&Aこれで解決!

変形労働時間制

Q.

1週40時間、1日8時間労働の法規制をクリアーするために、従来より土・日を休日とする週休2日制を実施してきました。ところが最近、忙しいときと暇なときの差が激しく、生産性や稼働率にバラツキがあります。ムダがある一方で残業による割増賃金が増え、悪循環です。メリハリの効いた労働時間配分による合理化策を模索しています。

A.

業務の繁閑の波が激しい企業では、労働時間を効率的に配分して法定労働時間を弾力化する「変形労働時間制」がおすすめです。これは、一定期間をならして週の法定労働時間を超えなければ、時間外労働の取扱いをしなくてもよいとする制度。単位となる期間ごとに帳尻が合えばいいのですから、時間外労働による割増賃金を合法的に減らすことができます。


◆法定労働時間の弾力化

  1週40時間、1日8時間というのが法定労働時間であり、これを超える労働に対しては、36協定の締結と割増賃金の支払いを要し、これらに違反すると罰則もある、というのがわが国の労働時間規制の基本です(労基法32条、36条、37条、119条)。
  これに対し、一定の期間を平均して週40時間の枠内にあれば、特定の週または日に法定労働時間を超過することを認める、というのが変形労働時間制です。労働時間の弾力的配分により、時間外労働を減らし、総労働時間を短縮することができるので、労使双方にとってメリットのある制度といえます。
  種類は、①1ヵ月単位(労基法32条の2)、②1年単位(32条の4)、③1週間単位(32条の5)の3つのタイプがあります。実際に利用されているのは、1ヵ月単位と1年単位の変形制です(1週間単位は要件が面倒で使い勝手がよくないため)。


◆1ヵ月単位の変形労働時間制

  業務の繁閑の周期が1ヵ月(または以内の期間)である事業に向いています。この制度を採用するには、次の4つの要件を満たすことが必要です。すなわち、①労使協定または就業規則その他これに準ずるものにより、②変形期間を1ヵ月以内とし、③変形期間における法定労働時間の総枠の範囲内で、④各日、各週の労働時間を特定すること。
  変形期間における労働時間の総枠は、1週間の法定労働時間40時間(特例事業は44時間)に、変形期間の日数を7で除した数を乗じて得られます(31日の月の場合、177時間となる)。
  各週、各日の労働時間は、あらかじめ労使協定または就業規則等で具体的に特定する必要があります。ただ、事前の特定が困難な場合、基本事項を就業規則で定めたうえ、1ヵ月ごとの勤務割表で特定することも認められています(昭63.3.14基発150号)。


◆1年単位の変形労働時間制

  季節等によって繁閑の差がある事業や、ゴールデンウィーク、夏休み、年末年始の連続休日を活用して年間カレンダーを作成し、効率化を図る工場等に適した制度です。ただし、その要件は、複雑で厳格です。
  第1に、労使協定の締結と届出が必要です。
  第2に労使協定に定める事項が法定されています。①対象労働者の範囲、②対象期間と起算日、③特定期間(業務が繁忙な期間)と起算日、④対象期間を平均して1週40時間を超えない範囲内で、労働日とその日ごとの労働時間を特定、⑤協定の有効期間(本条1項、則12条の2、12条の4)。
  第3に、対象期間が長期になることから生じる弊害を防止するため、労働時間の限度等も定められています。①1年あたりの所定労働日数は280日以内、②1日の労働時間の限度は10時間、1週で52時間、③連続労働日数の限度は6日、④特定期間は12日(本条3項、則12条の4)。
  工夫次第で労働時間の効率的配分はできます。

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