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労働実務Q&Aこれで解決!

正社員とパートの賃金格差

Q.

近隣地域でスーパーマーケットを8店舗経営し、正社員40人、パート社員120人を雇用しています。パートの勤務時間は6時間前後を中心に、様々です。正社員は経験や能力等を考慮して決定される月給制ですが、パートは時間給で、正社員と比べて時間当りの賃金額はかなり低く設定されています。この賃金格差は、法律上問題となりますか。

A.

わが国で「同一(価値)労働同一賃金の原則」が是認されているかどうかについては議論があり、判例も分かれています。ただし、今年(2008年)4月に施行されたパート労働法は、仕事の内容と責任、人事異動の有無などが正社員と同じで、契約期間の定めがないパート社員については、賃金等の差別的取扱いを禁止しましたので、注意してください。


◆同一労働同一賃金の原則は認められるか

  法律上は、同一(価値)労働同一賃金の原則や均等待遇の原則が、一般条項である「公序良俗」(民法90条)を構成するかどうか、という形で議論されています。
  憲法14条、労基法3条・4条の趣旨、批准されたILO100号条約、国際人権規約A規約等にもとづいて、同一(価値)労働同一賃金の原則、あるいは均等待遇の原則に公序性を認める見解もあります。
  裁判例にも、労働内容や勤務時間が正社員とほとんど変わらない「擬似パート」の事案で、女性臨時社員の賃金額が同じ勤続年数の女性正社員の8割以下となるときは、同一(価値)労働同一賃金原則の根底にある均等待遇の理念に反し、公序良俗違反として違法となる、と判示したものがあります(丸子警報器事件 長野地上田支判平8.3.15)。
  しかし、ヨーロッパのように職務を基準とした横断的な賃金相場が確立されていないわが国において、公序といえるだけの社会的基盤があるのか、はなはだ疑問です。学歴、年齢もしくは能力といった属人的な賃金決定要素が支配的なわが国の賃金制度との適合性もありません。


◆契約自由の原則に委ねる

  私は正社員とパートの賃金格差は、公序良俗違反にはならないと考えています。少なくとも最低賃金額を満たし、労基法3条・4条等の差別禁止規定に抵触しないかぎりは、契約自由の原則(私的自治の原則)に委ねられているというべきでしょう。
  実際にも、正社員が新卒就職市場で競争と慎重な選考を経て採用され、長期的人材育成の対象とされつつ、人事権による拘束を受けるのに対し、パート社員は地域市場で簡易な選考で採用され、長期勤続を期待されず、会社との拘束関係もより希薄です。正社員とパート社員の賃金決定システムが異なっているのです。労・使双方のニーズを無視した過度の法的介入は、主婦パートの雇用や定年後の再雇用を阻害しかねません。
  判例にも、期間雇用の臨時従業員について、正社員と異なる賃金体系によって雇用することは契約当初から予定されており、契約自由の範疇であり、何ら違法ではない、と判断したものがあります(日本郵便逓送事件 大阪地判平14.5.22)。


◆パートタイム労働法の改正

  改正法は、正社員と同視できる働き方をしているパート社員に対する差別的取扱いを禁止しました。すなわち、仕事の内容や責任、人事異動の有無などが正社員と同じで、契約期間の定めがないパート社員である場合、賃金、教育訓練、福利厚生施設の利用等、すべての待遇面で、差別することを禁止したのです。
  有期の労働契約であっても、反復更新され、実質的に期間の定めのない労働契約と同視し得る場合も含まれます。

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