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労働実務Q&Aこれで解決!

最低賃金

Q.

パート、アルバイトや派遣社員など、正社員ではない「非正規雇用」労働者が増え、正社員との賃金格差が問題になっています。また、今の最低賃金では生活ができないとか、生活保護より最低賃金の方が低い地域があって、働く意欲を損なっている等の指摘もあります。最低賃金を引き上げるということで、労使が合意するのは容易ではないようですね。

A.

最低賃金については労使の主張が鋭く対立し、専門家の間でも見解が分かれています。企業サイドからは、最低賃金の引き上げは人件費増につながり、とりわけ最低賃金に近い水準でパートを雇用している中小企業への影響は小さくない、と言われています。景気は減速しており、最低賃金が大幅に上がると、人員削減で対応せざるを得ないところもあるからです。


◆最低賃金の意味と審議会方式

  最低賃金とは、国が賃金の最低限度を定め、使用者は、その最低賃金額以上の賃金を労働者に支払わなければならないとされている制度。最低賃金法が根拠法で、昨年改正されました(本年7月1日施行)。
  賃金額の決定については、本来当事者である労使の自由な交渉で決めるのが原則(契約の自由)ですが、労働者を保護するため、国が市民法原理に法的制約を加えているのです。
  最低賃金の決定方式には、審議会方式と労働協約拡張方式の2つがありましたが、法改正により労働協約拡張方式は廃止されました。
  地域別最低賃金は次のような手順で決まります。まずは厚労相が中央最低賃金審議会に諮問し、審議会は、地域別の最低賃金の引き上げ額を目安として答申。都道府県は4つのグループ(A~D)にランク分けされ(ちなみに山口県はCランク)、各グループごとに目安が提示されます。都道府県単位の地方最低賃金審議会はこの目安を参考に、地域の実情も踏まえて地元の最低賃金を答申。各都道府県の労働局長が最終決定します。 
  なお、産業別最低賃金制度は、抜本的に改編され、「特定最低賃金」という新制度としてスタートすることになりました。


◆最低賃金の効力と履行確保

  最低賃金に違反した使用者は、50万円以下の罰金に処せられます(40条)。また、最低賃金に達しない賃金の定めをしてもその部分は私法上無効であり、無効となった部分は最低賃金と同様の定めをしたとみなされます(4条2項)。
  使用者は、最低賃金の概要を、常時作業場の見やすい場所に掲示するなど、労働者に周知させる義務があります(8条)。
  使用者のこれらの義務の履行を確保するために、労働基準監督官の立入、帳簿書類等の検査、質問権が規定されています(32条)。


◆「改正最低賃金法」のポイント

  今年(平成20年7月1日)施行された改正法のポイントは、大きく分けて5つあります。
  ① 地域別最低賃金を決定する場合には、労働者が健康で文化的な最低限度の生活を営むことができるよう、「生活保護に係る施策との整合性」にも配慮することとなります。
  ② 地域別最低賃金を下回る賃金を支払った場合の罰金額の上限が、2万円から50万円に引き上げられ、罰則が強化されました。
  ③ 使用者が都道府県労働局長の許可を受けたときは、一定範囲の労働者は適用を除外される規定が見直されます。「最低賃金の減額特例」が新設され、減額できる率等を法律で定めることになりました。
  ④ 派遣労働者については、派遣先の事業場に適用されている地域別(産業別)最低賃金が適用されます。
  ⑤ これまで時間額、日額、週額または月額で定めることとされていた最低賃金の表示単位が、時間額表示のみに統一されます。

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