労働局による個別労働紛争解決手続
Q. 最近では、争議等の集団的労使紛争が減少し、解雇、配置転換・出向、労働条件の引下げ、いじめ・嫌がらせ等の個別労働紛争が増加しているそうですね。紛争解決の最終的手段としての裁判は、時間と費用がかかり、当事者双方にとって大きな負担。今、労働局では、無料で迅速に職場のトラブル解決を手伝ってくれる制度が始まった、と聞いたのですが。 |
A. 平成13年10月に、「個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律」が施行されました。これにより、都道府県労働局に次の3つの制度が用意されています。①総合労働相談コーナーにおける情報提供・相談、②都道府県労働局長による助言・指導、③紛争調整委員会によるあっせん、等の手続きです。制度発足以降、利用件数は増加しているそうです。 |
◆個別労働紛争解決促進法
従来より集団的労使紛争については、労働委員会による労働争議の調停等と不当労働行為の救済制度がありましたが、個別労働紛争については特別の法的システムがありませんでした。しかし、近年の雇用形態の多様化や人事管理の個別化等の進展を背景として、個々の労働者と使用者との間で、賃金や解雇をめぐる紛争が激増し、法整備の必要が迫られていたのです。
平成13年に施行された個別労働紛争解決促進法は、上記のような3つのスキームを整え、運用開始以降、順調に制度の利用が進んでいます。平成19年度には、総合労働相談件数が約100万件、民事上の個別労働紛争相談件数が約20万件、あっせん申請受理件数が約7,000件となり、毎年増加傾向を見せています(平20.5.23厚労省発表「平成19年度個別労働紛争解決制度施行状況」)。
◆個別労働紛争解決手続の流れ
① 総合労働相談窓口における情報提供・相談
まずは、個別労働紛争の予防と自主的な解決の促進のため、労働者や事業主に対し情報の提供、相談その他の援助を行います(個別労働紛争解決促進法3条)。トラブルの原因には、単に法令や判例を知らなかったり、誤解に基づくものが多く見られ、情報提供や相談により解決が期待できるからです。
総合労働相談コーナーの設置は、いわゆる「ワンストップ・サービス」として、都道府県の労政事務所や労働委員会、労基署、雇用均等室に紛争内容を仕分けし、適切な解決ルートに導くことにねらいがあります。
そこで残され、相談のみで解決しない事案が、次の2本立てのいずれかに移行します。
② 都道府県労働局長による助言・指導
当事者の一方または双方から解決の援助を求められた場合、都道府県労働局長が必要な助言または指導をすることができます(同法4条)。紛争当事者に対し、問題点を指摘したり解決の方向性を示すことにより、紛争の自主的解決を促進しようとする制度です。
③ 紛争調整委員会によるあっせん
当事者の双方または一方から申請があり、都道府県労働局長が必要と認めたときには、紛争調整委員会に紛争のあっせんを行わせることができます(同法5条)。あっせんの手続は、当事者の間に公平・中立な第三者として学識経験者が入り、話し合いを促進することにより、紛争の自主的解決を図ろうというもの。当事者双方があっせん案の提示を求めた場合には、具体的なあっせん案を提示。委員会には、当事者にあっせん案の受諾を求める法的権限はありません。しかし、当事者間であっせん案に合意した場合は、民法上の和解契約の効力をもつことになります。
あっせんの手続の特徴は、多くの時間と費用を要する裁判に比べて、迅速・簡便・無料であること。紛争当事者のプライバシー保護のため、非公開です。事業主は、あっせんの申請をしたことを理由として、労働者に対し解雇その他不利益な取り扱いをしてはなりません(同法5条2項)。
|