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労働実務Q&Aこれで解決!

解雇に対する法的規制

Q.

景気が冷えこんでいくなか、企業をとりまく環境も厳しさを増しています。経営者として、企業の生き残りを模索中ですが、今後、不本意ながら従業員を解雇することもあるでしょう。ただし、事前に労使間で十分に話し合ったり、説明もしたいと思っています。解雇を行う場合に法令で定められている規制や遵守すべき手続等についてご教示下さい。

A.

解雇に対する法令上の制限は、解雇理由と解雇手続の二つに分けることができます。解雇理由には、解雇紛争の解決にとって最も重要な解雇権濫用法理にもとづく制約と、個別の法令にもとづく解雇禁止があります。また解雇手続にも、よく知られている解雇予告制度と、就業規則や労働協約など企業内の自主規範にもとづく制約の問題があります。


◆解雇理由による制限

 解雇とは、使用者の一方的な意思表示により労働契約を解除すること。労働者本人と家族の唯一の生活の糧を一方的に奪い取るものですから、合理性や相当性が必要です。
 労働契約法は、解雇権濫用法理を明文化しています。すなわち、「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」(16条)と定めています。この解雇権濫用法理は、判例によって確立されました。いったんは労基法のなかに新設条文として登場(18条の2)。その後、本来収納されるべき労働契約法に移し変えられることになったのです。解雇権濫用法理は、あらゆる解雇に適用される一般条項です。
 以上のほか、現行法は、特別の事由がある場合の解雇も、次のように禁止しています。
 ① 業務上の傷病による休業期間およびその後30日間の解雇(労基法19条)。② 産前産後の休業期間およびその後30日間の解雇(労基法19条)。③ 国籍、信条、社会的身分を理由とする解雇(労基法3条)。④ 労働基準監督署に申告したことを理由とする解雇(労基法104条)。⑤ 労働組合の組合員であることを理由とする解雇(労組法7条)。⑥ 性別、女性の婚姻、妊娠、出産、産前産後休業等を理由とする解雇(雇用機会均等法6条、9条)。 ⑦ 育児・介護休業の申し出をし、または休業を取得したことを理由とする解雇(育児・介護休業法10条、16条)。⑧ 個別労働紛争の解決の援助を求めたことを理由とする解雇(個別労働紛争解決促進法4条、5条)。⑨ 通常の労働者と同視すべきパートタイム労働者に対する差別的扱いとしての解雇(パートタイム労働法8条)。⑩ 公益通報をしたことを理由とする解雇(公益通報者保護法3条)。


◆解雇手続による制約

 解雇をする正当な理由があったとしても、労基法による解雇手続が必要です。使用者は、労働者を解雇する場合には、30日前にその予告をするか、予告に代えて平均賃金30日分の予告手当を支払わねばなりません(労基法20条)。予告と予告手当の併用も可能で、たとえば、20日分の予告手当を支払えば、予告期間は残りの10日になります。これらは、突然の解雇から生ずる労働者の不利益を緩和しようとするための使用者への手続的規制です。
 また、就業規則や労働協約など、企業内の自主規範にもとづく拘束も受けます。たとえば、就業規則には、普通解雇と、制裁の一種である懲戒解雇の規定がおかれ、解雇の事由と手続が定められています。また、労働協約があるところでは、解雇する場合には、労働組合の同意や協議をする旨の規定があります。就業規則は使用者が一方的に制定でき、労働協約は労使の合意を要するという違いこそあれ、自らが定めた自主的規範の限定や制約から免れることはできないのです。

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