能力不足を理由とする解雇
Q. 当社では、昨年、市場志向を強化するため、マーケティング部を新設。ヘッドハンティングの会社から、大企業の営業課長経験者を紹介され、マーケティング部長として高給で中途採用しました。ところが、会社が期待していた職務が履行された形跡はなく、数値目標も5割程度の未達状態。部長としての能力がないとして、解雇することができますか。 |
A. 御社の就業規則には、「雇用を継続し得ないやむを得ない事情のあるとき」は、普通解雇できる旨の規定があります。いわゆる即戦力として職務上の地位を特定して採用された場合や、賃金等で、優遇されている場合は、その職務を遂行する具体的能力が労働契約の内容になっています。このようなケースでは、比較的容易に解雇が認められるでしょう。 |
◆就業規則の解雇事由と解雇権濫用法理
まず、労働者の能力不足を理由とする解雇が、就業規則の解雇事由に該当するかどうかが問題となります。労基法は、「解雇の事由」を就業規則の絶対的必要記載事項として、あらかじめ明示することを求めているからです。この会社の就業規則には、いくつかの解雇事由が列挙してあり、最後に「その他、雇用を継続し得ないやむを得ない事由のあるとき」という包括的条項があります。これには該当するといわざるを得ないでしょう。
◆即戦力として厚遇で採用された場合
本件では、一般の従業員と異なり、「マーケティング部長」として職務上の地位が特定され、その職務にふさわしい能力と適格性があることが労働契約の内容になっています。高額の賃金処遇も受けています。ですから、会社は、マーケティング次長に降格したり、他の部署に配転して雇用を保障する必要もありません。この労働契約は、対等な当事者を前提にした民法の契約概念に近く、提示された成果目標の未達は、能力不足による債務不履行の状態として理解することができます。
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