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労働実務Q&Aこれで解決!

退職金制度の見直し

Q.

適格退職年金制度が平成24年3月31日に廃止されます。当社で導入している適格退職年金も積立不足という深刻な問題を抱えつつ、同時に他制度への移行を迫られているという状況です。現在、保険会社から確定拠出年金(401K)への移行を提案されていますが、問題を解決する糸口が見つからず、迷っています。よいアドバイスをお願いします。

A.

退職金原資の積立制度のことで悩んでおられるようです。しかし、まず検討すべきは、退職給付債務の根拠となっている退職金規程。積立制度はその手段であり、他の制度へ移行しても積立不足は解消されません。現規程の問題点を洗い出し、法規制への対応を十分考慮したうえで、新しい制度設計の方向性を決める。それに適う積立制度を選択することです。


◆退職金規程の法的意味

 退職金は、法律上使用者が当然に支払うことを義務づけられているものではありません。しかし、労働協約、就業規則などの退職金規程で、明確に支給条件が定められている場合には、退職金も賃金となり、使用者に退職金の支払義務が発生します。
 労基法は、使用者が「退職手当の定めをする場合においては、適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算及び支払いの方法並びに退職手当の支払いの時期に関する事項」を就業規則に定めなければならないと規定しています(89条3号の2)。
 つまり、退職金規程は、労働条件を定めた就業規則の一部であり、退職給付債務を発生させる根拠となる職場規範なのです。


◆退職金規程の不利益変更

 退職金規程の見直しは、労働条件を変更することであり、就業規則の不利益変更という問題に逢着します。すなわち、使用者による就業規則の一方的不利益変更が許されるのか、その民亊的効力如何が問われます。
 これに関しては、労働契約法が判例法理を踏まえたうえで、労働条件の不利益な変更も労働者との合意があれば可能であり、一方的な不利益変更も合理性があることを条件に有効である、と定式化しています(9条、10条)。
 ただし、賃金・退職金は労働者にとって最も重要な労働条件です。特例の配慮が求められ、合理性は容易に認められないでしょう。
 したがって、少なくとも新制度移行時における従業員の既得権を保障し、個々の従業員の納得と同意を得ることが賢明な方法です。


◆退職金制度改革のすすめ方

 積立不足の問題を念頭におくかぎり、従来の高水準の退職金制度を維持することは基本的に困難となっています。退職金のあり方を考え直すいいチャンスと捉えましょう。
 制度改革のステップは次のようになります。①現状分析(現行規程の分析、積立不足の把握)、②基本方針の決定(目的条項の再検討、確定給付か確定拠出かの選択)、③制度設計(計算方法、新規程の作成、積立制度の選択)、④社員説明会の開催、⑤制度実施。
 今回の退職金制度の見直しにおいては、従来の確定給付型(適格退職年金はその代表格)を維持するのか、あるいは確定拠出型に変更するのかが、大変重要な選択になってきます。いずれにしても、能力や貢献度を退職金額に反映できるポイント方式がおすすめです。
 適格退職年金の移行先は、中小企業退職金共済、確定拠出年金(401K)、確定給付企業年金、厚生年金基金、もしくは解約という5つの選択肢にしぼられています。
 確定拠出型を選択するとしても、401Kだけでなく、既存の中退金や退職金前払い制度(究極の確定拠出型)という選択も十分可能です。従業員に拠出金運用の責任を負わせることが適当なのかも、留意すべきです。

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