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労働実務Q&Aこれで解決!

割増賃金率の引き上げ

Q.

当社では、忙しい部署と比較的余裕のある部署が混在し、多忙な職場では恒常的に時間外労働をしています。長時間労働を担っているのは主として子育て世代の男性で、仕事と家庭の両立という観点からも望ましくありません。今回の労基法改正を契機に、長時間残業をなくし、仕事の効率や生産性を高めるための業務改革に取り組まねば、と考えています。

A.

今回の法改正は、長時間労働を抑制し労働者の健康を確保するとともに、仕事と生活の調和のとれた社会の実現を図ることを目的としています。その眼目は、月60時間を超える時間外労働に対して50%以上の割増賃金を支払うことと、40時間超60時間以下の時間外労働に対して25%を超える努力義務を課したこと。業務改革に着手するチャンスです。


◆法定割増賃金率と限度基準の見直し

 今回の労基法改正(平成22年4月1日施行)のポイントは大別して次の3点です。
 1点目は、法定割増賃金率の引き上げ。現行は、法定労働時間(1週40時間、1日8時間)を超える時間外労働(法定時間外労働)に対し、25%以上の割増賃金を支払うこと。法改正により、その時間外労働が1ヵ月について60時間を超えた場合に、50%以上の割増賃金を支払わねばならないこととされました(37条1項但書)。
 この場合、その前提として、「時間外労働の限度に関する基準」(平成10年労働省告示第154号)にもとづき、限度時間(1ヵ月に45時間)を超えて時間外労働ができる特別条項付き36協定が締結されていなければなりません(労基署への届出も必要)。
 今般、この限度基準も改正され、1ヵ月について45時間を超え60時間以下の時間外労働に対しては、25%を超える割増賃金を支払う努力義務が定められました(36条2項)。これに伴い、特別条項付き36協定には、限度時間を超えた場合の割増賃金率を記載する必要があります。
 60時間超の法定割増賃金率については、中小企業に限り3年間の猶予措置がありますが(138条、附則3条1項)、45時間超60時間以下の割増賃金率についての努力規定は全企業に適用されるので注意が必要です。


◆代替休暇制度と時間単位年休制度の創設

 2点目が、代替休暇制度の導入。労使協定を締結することを条件に、60時間を超える時間外労働については、割増賃金に代えて有給休暇を付与することができます(37条3項)。たとえば、割増賃金率を50%にした場合、改正によって引き上げられた25%分について、1日または半日を単位として有給休暇に振り替えることができるようになりました(中小企業は、3年間の猶予)。
 3点目は、時間単位年次有給休暇制度の創設。現行では、有給休暇は1日または半日単位で取得することとされていますが、労使協定を締結することにより、年に5日を限度として、時間単位で有給休暇を取得できます(39条4項、7項)。労使協定のほか労基法89条1号により、時間単位年休に関する事項を就業規則に記載しなければなりません。


◆労使紛争の予防と業務改革の推進

 法律改正に伴い、就業規則や賃金規程、労使協定の見直しだけでなく、勤怠管理などの情報処理システムの変更も不可欠。想定できるリーガルリスクへの対応を誤ると、無用な労使紛争にも発展しかねません。
 働く人の就業意識が様変わりしている今日、長時間労働をなくし、多様な働き方を可能とするような制度の導入を検討しましょう。働き方を見直し業務改革を推進し、効率性、生産性を向上させるのです。従業員満足を実現することは、優れた人材育成と人材の確保に寄与し、企業の成長につながるのです。

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